お客様の声

July 22, 2016

 

 接客が仕事ですので、お客様との会話の中でたくさんの言葉の情報が私に入力されます。「これすごく美味しかった。」「今日は記念日の食事なんです。」「ヴェネツィアで食べた料理が忘れられないんだよ。」などなど。お客様の感想や料理の好み、いろいろ話していると住んでいるところやお仕事などもわかってきたりします。

 全ての情報を活かしているかと聞かれれば、まだまだ努力不足ですと答える程かもしれませんが、お客様個人に興味がわけばわくほど、覚えられる情報も多くなりもっと知りたいとも思います。

 先日は当店のコース料理の、それこそ私たちが感じてくれたらうれしいなという細かな気配りを、こちらからはそこまで説明をしていなかったのに、あるお客様はきちんと言葉にして伝えてくれました。

 とてもうれしく、そのシーンは深く心に刻まれ、私にとっては一生忘れないお客様となりました。

レストランで働いていてこんなに幸せなことはありません。この仕事をしていて一番よかったと思える心の充実感でした。

 おそらくそのお客様は本音でそれを語ってくれたと感じておりますが、実はそんなことばかりではありません。「ちょっと口に合わなかったかな。」「塩味が強くて食べられないね。」「この肉硬すぎて噛みきれないよ。」「まだ料理が来ないんだけど早くしてもらえる?」といった、不満足な言葉もいただいたりします。そのような結果を生んでしまったとき、すぐにその原因を探ります。料理の味付けが言われように問題があったのか、又はたまたまそのお客様の口に合わない様子だったか、提供スピードはどうだったのか。

 コックさんはきちんと味見をして作ってますがもしかしたら味付けがぶれたのかもしれない、お客様が実は薄味が好みだったのかもしれない、次の用事があり急ぎの食事だったのかもしれない。考えられる原因はさまざまです。ですが、不満足な言葉をきちんと言っていただいたことに、私はとても感謝をします。これでは私は満足しませんよという、こうしてくださいというニーズがわかるからです。すべての要望に応えることはできませんが、たくさんのお客様に喜んでいただきたいと考えているならば、多様なニーズにこたえることが私たちがやらなければならない事だとおもいます。本当にありがたい声です。

 そして私がもっとも気にしているのは、お客様の思っているけど口にしない声です。「ごちそうさま、また来るよ。」と言ってこないお客様は実に多くいらっしゃいます。もちろん社交辞令としてかけてくれる声でありますし、私どもを気遣ってそんなに満足していないけど傷つけてはいけないからと、優しい気持ちで言って下さっているのもよくわかります。だから、その向う側の声をいつも気にします。「あの料理、量が少なかったよね。」「結構な値段だったけど、たいしたことないお皿だったな。」「料理もサービスもいいんだけど、なんか居心地がよくないんだよね。」

 店内に着席してるお客様の声はもちろん直接いろいろ伺って、もっとよい店にするためにきちんとかみ砕いて消化していきます。その隣の、一晩空いていた席、用意しているのに使われなかった席に耳を傾けます。「もっとメニューに変化があったら来るよ。」「接客がもっと丁寧だったら行ってもいいかな。」「美味しい物入ったら教えてくれれば食べに行くよ」

 もし当店が満席となったら、今の従業員ではとうてい対応することはできませんが、レストランを開いていて使わない席がたくさんあっていい、なんてことはありえません。それでしたらもっと家賃のかからない、使うだけの席数の店舗の方が、食材にもお金がかけられますし、従業員にも手当を多くできます。お客様の中には空いているからいいねという方もいらっしゃいますが、賑わっている(騒がしいではない)お店の方が、格段にいいとは思いませんでしょうか?

 お見送り際によく感想を伺いますが、その時いただいた言葉よりも、扉から離れて連れの方とかわすお店の感想の「声」がいつも気になります。接客の途中の表情の様子から推測するしかないんですけれども。

 一つそのもやもやがパアーッと晴れる時があります。初めて来たお客様が、もう一度来店されたときです。そして一度目の来店の時を思い出します。そこに成功事例があることが多いのです。その繰り返しがわたくしを支えてくれています。

 レストラン側からもお客様に伝えたいこと、表現したいことはたくさんございます。それは値段だったり味付けだったりスピードだったり、たくさんの方のニーズにあてはまらないこともあります。ですが、レストランを存続させていくには従業員の満足とお客様の満足の両方を成り立たせていかなければなりません。これがずっと課題だと思っています。

 皆様もレストランで疑問に感じたこと、なぜこの味付けなのか、どうしてこの値段なのか、どうして早く持って来れないのか、どうぞ声にして従業員に尋ねてみてください。お互い理解しあえればきっともっと良い飲食業界となっていくと私は信じています。

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